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退院後の通院費用をカバーしてくれる通院保障。どんな内容?必要性は?

# 医療保険
# 保障内容

公開日:2022年12月1日

入院日数は短期化し、退院後に仕事や家事・育児などと両立しながら通院し、治療を続けるケースが増えています。退院後の通院にかかる費用をカバーしてくれる通院保障について、検討する際のポイントや注意点を紹介します。

退院後の通院回数は増加傾向

入院日数が短期化しつつあることはよく知られていますが、必ずしも完治して退院するケースばかりではなく、退院後、仕事や家事・育児などと両立しながら通院し、治療を続ける場合も少なくありません。

退院後の通院が増えている理由の1つは、内視鏡下手術や腹腔鏡下手術など傷を小さくする手術方法や、がんの化学療法や内分泌療法等クスリによる治療が普及するなど医療技術の進歩によって患者の身体への負担が軽減され、入院と通院とを組み合わせた治療ができるようになってきたからです。また、高齢化が進む日本において国が負担する医療費の増加は社会保障制度の存続にかかわる問題であるため、医療費適正化へ向けて入院病床数を減らし、入院日数も短期化する方針が打ち出されています。こうした背景があるため、医療保険による病気やけがへの備えは、入院だけでなく、通院などにも対応する方がより安心だといえるでしょう。

図表 退院後に通院した患者数の推移
厚生労働省「患者調査」を基に筆者作成

退院後の通院費用をカバーしてくれる通院保障

病気やけがによる入院・手術費用の自己負担を補てんするのが医療保険の主な役割ですが、特約という形で心配事に応じたさまざまなオプションを選択することができます。その中でも退院後の通院について保障が得られるのが「通院特約」です。

通院の際には治療費や薬代がかかる他、仕事を休んだり、子供を預けたりする必要も出てくるでしょう。遠方であれば交通費が高額になることもあり、経済的な負担は無視できません。通院保障はそうした通院生活を支えることを目的としています。

なお、“風邪をひいたので病院へ行った“というようなケースはあてはまらず、退院後あるいは入院前の通院であるなど一定の条件は設けられています。ただし、がん保険や抗がん剤治療特約などで通院のみでもカバーされる場合もあります。

保障される期間や給付金額の考え方

通院保障の保障期間や給付金額などの条件は、商品ごとに異なります。検討する際のポイントとしては、大きく「通院の条件」「対象期間と日数」「給付金額」が挙げられます。

通院の条件

多くの場合、通院保障は特約となっており、主契約の給付金が支払われる入院のあとの通院(商品によっては入院の前の通院が含まれる場合もある)であること、その入院の原因となった病気やけがの治療を目的とした通院であることが条件となっています。ここでいう通院は、医師による治療を行うためのもので、単なる検査や薬の受け取りなどは通常含まれません。

なお入院の原因となった病気やけがの治療が目的であれば、入院していた病院ではなく別の病院や診療所への通院であっても認められます。

対象期間と日数

通院保障の対象となる期間と日数は、無期限、無制限というわけではなく、一般的に退院後4か月~6か月程度の間に最大30日(通算約1,000日)まで、などの制限が設けられています。商品によっては、特定の病気について退院後の対象期間が長いもの、利用できる日数の制限を設けないものもあります。

対象期間が長く、利用できる回数が多い方が安心ですが、カバーする範囲が広くなるほど保険料はアップしてしまうので、がんなど特に心配な病気があれば、その部分だけ通院保障を厚くして保険料を抑えるというのも1つの選択肢でしょう。

給付金額

対象となる通院をした場合に受け取る通院給付金は、通院日額を設定し、その金額に通院した日数をかけて計算します。通院日額は、入院日額1万円のとき6,000円、入院日額5,000円のとき3,000円などと選択肢が少ない商品もあれば、入院日額に関わらず自由に設定できる商品もあります。通院保障を重視しつつ保険料を抑えたいなら、例えば入院日額5,000円、通院日額1万円といった設定も可能な後者の方がおすすめです。

通院日額はいくらが適正か一概には決められませんが、治療費以外の支出として交通費(タクシー代含む)や子供を預ける場合、仕事を休んで収入が減る場合など、病院と住まいの距離や家族構成、働き方などそれぞれの事情を考慮しましょう。

また、通院日額×通院日数で計算する通院給付金のほかに、対象期間中に1回まで、1日以上通院すると日数に関わらず一時金を受け取ることができる通院一時金を設定できる商品もあります。

請求を忘れないよう注意

終わりが明確な入院とは異なり、通院は一定期間継続するケースが多いため、給付金を請求するタイミングが分からず、そのまま忘れてしまうことがあります。通院の度に記録をとっておき、2~3か月まとめて請求するとよいでしょう。なお、請求の際に必要になる書類は保険会社によって異なり、通院証明書のように有料のものもあるため、あらかじめ確認してから用意するようにしましょう。

  • この記事の情報は2022年7月11日時点
プロフィール

ファイナンシャル・プランナー

國場弥生(くにばやよい)

(株)プラチナ・コンシェルジュ取締役。証券会社勤務後にFPとして独立し、個人相談や雑誌・Web執筆を行っている。All Aboutマネーガイドも務めており、著書に「誰も教えてくれない一生お金に困らないための本 」(エクスナレッジムック)などがある。

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