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女性にはやっぱり女性保険!女性のライフステージに注目した女性保険の選び方

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# 保障内容

公開日:2022年12月1日

女性には、女性特有の病気や女性に多い病気があり、妊娠・出産時に発生するリスクもあります。これらの心配ごとに対して、手厚い保障が受けられる医療保険に女性保険があります。ここでは、ライフステージごとに気をつけたい病気やリスクを紹介し、女性保険に加入する際、どこにポイントを置いて選べばよいのかを解説します。

女性が生涯で罹りやすい病気や抱えるリスクとは

女性は子宮があることや、女性ホルモンのバランスが影響することなどで、女性だからこそ罹患しやすい病気があります。そして、妊娠・出産を機に発生するリスクもあります。では、女性だからこそ罹りやすい病気やリスクにはどのようなものがあるのでしょうか。

女性特有の病気

まず、女性特有の病気には、子宮・卵巣・乳房に関わるものがあります。

女性特有の病気

・子宮筋腫・子宮内膜症・子宮頸がん・子宮体がん・性器脱(子宮脱・膣脱)・卵巣機能障害・卵巣がん・卵巣腫瘍(良性)・乳がんなど

なかでも子宮筋腫は代表的な病気です。筋腫ができていても、初期の段階や無症状の場合は経過観察となることが多いですが、月経時の症状が辛くなってきたり周囲の臓器に障害が出てきたりすると、手術が必要になります。
乳がんは男性もかかることがありますが、令和元年(2019年)に乳がん(上皮内がんを除く)と診断された女性の数は、男性の約145倍(男性の数:670人、女性の数97,142人)(※1)のため、乳がんも女性特有の病気といえるでしょう。

女性に多い病気

続いて、女性に多い病気には、自己免疫疾患である甲状腺の病気(バセドウ病、橋本病)や膠原病(関節リュウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群など)、膀胱炎、鉄欠乏性貧血(栄養性貧血)などがあります。

女性に多い病気

・バセドウ病・橋本病・膠原病・膀胱炎・鉄欠乏性貧血・胆石症・尿路結石など

自己免疫疾患の病気は、外来での内服薬治療が可能なものもありますが、入院を伴う手術が必要なものもあります。また、膀胱炎は外来治療ですむことが多いですが、放置しておいたり細菌の感染が強かったりすると腎盂腎炎になってしまうことがあり、入院して抗生物質の点滴を受けることになります。胆石症や尿路結石症も内服薬での治療を試みることもありますが、効果がなかったり治療が長引いたりする場合などは手術となります。

ライフステージによって異なる罹患しやすい病気

ひとくちに女性が罹患しやすい病気といっても、ライフステージによって病気の種類は異なります。ここでは、女性が入院する原因となるおもな傷病を年代別にみてみましょう(図1)。

図1 女性が入院する原因ランキング (年代別にみた 入院受療率※)
出典:厚労省「平成29年(2017年)患者調査 上巻(全国)
(上巻第26-1表 入院受療率(人口10万対),性・年齢階級 × 傷病分類別)」を参考に筆者が作成
※受療率とは、人口10万人に対する推計患者数(調査日に全国の医療機関で受療した患者の推計数)のこと

20代・30代は妊娠・出産にかかわる入院が1位

出典:厚労省「平成29年(2017年)患者調査 上巻(全国)
(上巻第26-1表 入院受療率(人口10万対),性・年齢階級 × 傷病分類別)」を参考に筆者が作成

この年代の女性が病気で入院にまで至ることは少なく、「妊娠・分娩及び産じょく」にかかわるもので入院する人が約40%を占めています(※2)。女性なら誰しも、妊娠してから出産するまで胎児も母体も無事に過ごすことができ、自然分娩となることを願うことでしょう。しかし、帝王切開による出産は約22%となっています(※3)。
妊娠・出産には、帝王切開のほか、流産や切迫早産、妊娠中の糖尿病、前期破水、妊娠高血圧症候群、異常妊娠(子宮外妊娠)などのリスクもあります。

40代・50代は精神的な疾患による入院が1位へ、2位には新生物が浮上

出典:厚労省「平成29年(2017年)患者調査 上巻(全国)
(上巻第26-1表 入院受療率(人口10万対),性・年齢階級 × 傷病分類別)」を参考に筆者が作成

40代以降は、妊娠・出産で入院する人は大きく減少し、代わりにメンタル系の疾患(統合失調症、気分障害、神経症性障害など)で入院する人が増えます。女性の場合、性ホルモンの分泌が1か月単位で変動を繰り返すことや、40代後半くらいから卵巣の働きが急激に低下し性ホルモンの分泌が減少することが、メンタル系の疾患で入院する大きな理由となっています。

この年代は、新生物(良性新生物、悪性新生物)が原因で入院する人も徐々に増えてきます。悪性新生物(がん)に絞って女性が罹患しやすい部位をみてみると、患者数のうち乳房(22.5%)、大腸(15.7%)、 肺(9.8%)、胃(9.0%)、子宮(6.7%)の順となっています(※1)。年齢階級別では、乳がんは30代前半から急増し、40代後半で最初のピークを迎えます。20代後半から緩やかに増加する子宮がんは50代でピークを迎えます。50代以降は大腸がん、肺がん、胃がんが増加します(図2)。

図2 女性の年代別・部位別のがん(悪性新生物)罹患率
年齢階級別罹患率(人口10万対);上位5部位、女(上皮内がん除く)
出典:厚生労働省「令和元年(2019年)全国がん登録 罹患数・率 報告」より

60代以降はあらゆる病気やケガに気をつけて

出典:厚労省「平成29年(2017年)患者調査 上巻(全国)
(上巻第26-1表 入院受療率(人口10万対),性・年齢階級 × 傷病分類別)」を参考に筆者が作成

60代以降は入院の原因となる傷病がさまざまです。とくに気をつけたいのは循環器系の疾患(脳血管疾患、心疾患、高血圧性疾患など)、いわゆる生活習慣病です。60代後半から入院患者が急増し、入院する原因のトップになっています(図1)。

また、悪性新生物(がん)も要注意です。65歳以上以降、入院ランキングのトップ3から外れているとはいえ、女性特有の乳がんの罹患率は、70歳前半で2 回目のピークを迎えます。大腸がんや胃がん、肺がんの罹患率は60代以降も上昇します(図2)。

以上のように、女性はライフステージごとに入院する原因が異なります。
入院・手術のリスクに備えて、日頃から貯金をしている人は決して少なくないはずです。しかし、そのような人でも、いざ入院や手術で貯金を取り崩すことになると、どれだけお金があっても不安になるものです。そのようなときに女性保険に加入していると、たとえ辛い入院や手術であっても、金銭的な心配が薄れることで前向きな気持ちになれることもあります。そこで、女性保険とはどのような保険で、どのように選ぶとよいのかを解説します。

女性保険の賢い選び方

女性保険とは、女性特有の病気や女性に多い病気を通常の医療保険よりも手厚く保障してくれる女性専用の保険のことです。女性保険には、入院のみ手厚く保障しているタイプと、入院だけでなく女性特有の手術をした場合に給付金を上乗せしてもらえるタイプがあります。
各保険会社の商品によって保障の内容は異なりますが、おもに次のようなものがあります。

  1. 1入院給付金の上乗せ

    女性特有・女性に多い特定の疾病で入院した場合に、通常の医療保険に上乗せして入院給付金が受け取れる

  2. 2手術給付金の上乗せ

    女性特有の手術(乳がんによる乳房切除、子宮摘出、子宮筋腫摘出、卵巣・卵管の切除や摘出)をした場合に、通常の医療保険に上乗せして手術給付金が受け取れる

  3. 3乳房再建手術の費用保障

    乳房再建手術をした場合に給付金が受け取れる

このような手厚い保障が受けられる女性保険ですが、どのようなメリットがあり、どのような保障を選べばよいのでしょうか。

メリット1(金銭面を気にせず心身ともに穏やかに入院できる)

女性特有・女性に多い病気で入院することになった場合、個室や2人部屋を利用したい人もいるでしょう。仮に個室で1日8,000円(図3)の差額ベッド代が発生し7日間入院した場合、56,000円の支出になります。入院中はさらに食事代や治療費の自己負担分が加算されるため、たとえ1週間の入院だとしても、思いがけない大きな出費になることもあります。

図3   平均的な1日あたりの差額ベッド代
1人部屋 8,221円
2人部屋 3,122円
3人部屋 2,851円
4人部屋 2,641円
平均 6,527円
出典:厚生労働省 令和3年(2021年)9月15日「中央社会保険医療協議会 総会(第488回)主な選定療養に係る報告状況」より

通常の医療保険でも入院すると入院給付金が受け取れますが、女性保険に加入していれば入院給付金の上乗せ保障があるので、お金のことを心配せずに個室や2人部屋を利用できます。プライバシーが守られることで、大部屋に比べるとストレスなく治療に専念でき、退院後の生活へ向けて前向きに準備する心の余裕もでてくるでしょう。

メリット2(公的医療保険の対象とならない乳房再建術にも備えられる)

健康保険の対象となる乳房再建術もありますが、なかには健康保険の対象とならない再建術もあります。自費診療となる乳房再建手術をした場合でも、給付金が受け取れる女性保険であれば、自己負担が少なくすむので安心して手術することができます。

女性ならではのリスクに幅広く備えられる女性保険を選ぼう

これまでみてきたように、20代・30代は妊娠・出産による入院・手術のリスク、40代以降はがんになるリスク、60代後半以降はあらゆる健康リスクに備えたいものです。
では、どのような女性保険を選ぶとよいのでしょうか。以前は、「上乗せできる入院給付金日額は主契約と同額」と決まっている保険会社が主流でした。しかし、最近は主契約の入院給付金日額と連動せず、自分で上乗せ分の入院給付金日額を設定できる自由度の高い保険会社もあります。なかには、主契約より入院給付金日額を多く設定することができ、より女性が罹りやすい病気に備えられるところもあります。女性特有・女性に多い病気で入院したときの入院給付金を自分でカスタマイズしたい場合は、このように自由度の高い女性保険を選ぶとよいでしょう。

女性保険では、保障される内容が保険会社によって大きく異なることも大きな特徴です。入院給付金が上乗せされる保障範囲を、女性特有・女性に多いがんだけでなく、すべてのがんとしているものもあります。図2でみたように、女性は子宮がんや乳がんだけでなく、大腸がん、肺がん、胃がんにもなる可能性は十分にあるため、保障範囲の広い女性保険にしておくようにしましょう。30代以降は、子宮がんと乳がんには気をつけたいので、女性特有の手術をしたときに手術給付金が上乗せされる保障があるとよいでしょう。

女性保険は女性特有・女性に多い病気には手厚い保障がある分、通常の医療保険よりも保険料が高くなります。しかしながら、たとえば通常の医療保険で入院給付金日額を増額するよりも、女性ならではの病気だけが増額になるため、保険料は割安です。各保険会社のパンフレットや契約のしおり、約款で保障の内容をしっかりと確認し、自分にとって必要かつ安心を保障できる女性保険を選ぶようにしましょう。

  • この記事の情報は2022年7月3日時点
プロフィール

ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級FP技能士、住宅ローンアドバイザー、定年力アドバイザー、相続手続カウンセラー

中山弘恵(なかやまひろえ)

生活に関わるお金や制度をテーマにした講師業務、執筆業務、個別相談業務に従事。「わかりやすく丁寧なセミナー」「ストレスなく読み進められるわかりやすい文章」「安心しながら気軽に話せる相談相手」として定評がある。

※1および図2 厚生労働省「平成 31年(令和元年)全国がん登録 罹患数・率 報告」
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000942181.pdf[PDF:2.53MB]

※2および図1 患者調査 平成29年患者調査 上巻(全国)
上巻第26-1表 入院受療率(人口10万対),性・年齢階級 × 傷病分類別
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003318584

※3 厚生労働省「令和2(2020)年医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/20/dl/02sisetu02.pdf[PDF:1.16MB]

図3 厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第488回)議事次第」総13−2
主な選定療養に係る報告状況
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000853121.pdf[PDF:86KB]

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