わかりやすいFPコラム

生活習慣病とは?3大・7大・8大生活習慣病にどう備える?

# 医療保険
# その他
# 選び方
# 保障内容

公開日:2022年12月1日

日頃気を付けていてもかかる可能性のある生活習慣病。生活習慣病にかかってしまったら家計にどんな影響がでるのか、あらかじめ把握しておけば対策も立てられます。保険で備える場合は、最新情報をチェックしつつ自分にあった保障内容を選択しましょう。

生活習慣病とは?

生活習慣病は、若い方よりも中高年の方が発症するリスクが高いとも言われますが、どんな病気なのでしょうか。

生活習慣病とはどんな病気?原因は?

生活習慣病とは、食事や運動、喫煙などの生活習慣に関係して発症する病気のことを指します。多少暴飲暴食をしたり運動不足だったりしても、すぐに健康的な生活に戻れば病気になる可能性は低いかもしれません。しかし、栄養バランスの悪い食生活や不健康な生活習慣が長く続いた場合には、生活習慣病を発症してしまうことも考えられます。

3大生活習慣病とは?7大や8大もある?

では、生活習慣病にはどんな種類があるのでしょうか。代表的なものが、「3大生活習慣病」といわれる、がん(悪性新生物、上皮内新生物)、心疾患(急性心筋梗塞、狭心症、心不全など)、脳血管疾患(脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血など)です。厚生労働省の「令和2年(2020年)人口動態統計」によると、がん(悪性新生物)、心疾患、脳血管疾患の3つで死因の約50%を占めています。

また、「3大生活習慣病」に、高血圧性疾患(高血圧症、高血圧性心不全など)、糖尿病、肝疾患(肝硬変、肝炎、脂肪肝など)、腎疾患(尿管結石、慢性腎不全、腎盂炎など)を加えたものを「7大生活習慣病」といい、さらに、膵疾患(慢性膵炎など)を加えたものを「8大生活習慣病」といいます。

主な生活習慣病の入院患者数と入院患者総数に占める割合
(単位:千人)
  入院患者数 入院患者総数に占める割合(概算)
総数(全傷病) 1312.6 100%
悪性新生物(腫瘍) 126.1 9.6%
脳血管疾患 146.0 11.1%
心疾患(高血圧性のものを除く) 64.0 4.9%
糖尿病 18.9 1.4%
慢性腎臓病 24.0 1.8%
肝疾患 7.4 0.6%
高血圧性疾患 5.6 0.4%

これらの生活習慣病は、生活習慣を改善すれば防ぐことも可能だと言われていますが、忙しい現代人が、食事や運動などに気を付けて生活することもなかなか難しいのが現状です。上記のように入院患者の約3割が7大生活習慣病によるものです。

生活習慣病にかかった場合に考えられる家計への影響

生活習慣病の中には、死に至る可能性のある病気もありますし、長期にわたって入院や治療が必要になる病気もあります。そのような場合、家計へはどんな影響が出るのでしょうか。

生活習慣病での入院日数は約29日

厚生労働省の「平成29年患者調査」によると、病気やケガで入院した患者の平均在院日数は29.3日です。近年、入院日数は短期化していると言われていますが、生活習慣病ではどのような傾向があるのでしょうか。

主な生活習慣病の年齢別退院患者の平均在院日数
(単位:日)
  総数 0~14歳 15~34歳 35~64歳 65歳以上
総数(全傷病) 29.3 7.4 11.1 21.9 37.6
悪性新生物(腫瘍) 17.1 21.6 15.9 13.0 18.6
脳血管疾患 78.2 12.3 25.6 45.6 86.7
心疾患(高血圧性のものを除く) 19.3 11.8 10.0 9.0 22.2
糖尿病 33.3 10.9 13.2 16.3 45.4
慢性腎臓病 47.9 28.4 14.9 25.6 54.4
肝疾患 22.9 8.8 10.3 16.5 27.7
高血圧性疾患 33.7 7.7 13.6 15.3 39.5

上記のように、入院日数が平均よりも長くなる生活習慣病も多く、年齢が高くなるにつれて長期の入院の傾向があるようです。また、退院後も自宅療養が必要だったり、通院治療が仕事に影響したりして、今までのように働けなくなる可能性もあります。このような場合には、入院や治療の費用だけでなく、収入減による家計への影響も考えられます。

悪性新生物が平均より短いのは、抗がん剤や放射線治療治療を通院で行うケースが増えていることも一因と考えられます。このような場合には入院費用は抑えられるものの、通院の治療費が大きくなることも予想されます。

生活習慣病の経済的負担に備えるには

生活習慣病にかからないよう生活習慣を見直すことはもちろん大切ですが、かかってしまった場合の経済的負担に備えておくことも大切です。そのために、まずは公的な制度を理解しましょう。

公的な制度で入院や治療の費用はカバーできる?

病気で治療を受ける場合の費用は、ご存知のように医療保険制度があり、基本的には自己負担は3割(年齢によっては1割~2割)で済みます。とはいえ、医療費が100万円だったら自己負担額は30万円と高額になります。そこで、1か月間の自己負担額が高額になった場合に軽減される「高額療養費制度」があります。

高額療養費の所得区分による自己負担限度額と多数該当の場合の自己負担額(70歳未満)
所得区分 自己負担限度額 多数該当の場合
健康保険の場合 国民健康保険の場合
標準報酬月額83万円以上 年間所得901万円超 252,600円+(総医療費(※)ー 842,000円)×1% 140,100円
標準報酬月額53万~79万円 年間所得600万~901万円 167,400円+(総医療費(※)ー 558,000円)×1% 93,000円
標準報酬月額28万~50万円 年間所得210万~600万円 80,100円+(総医療費(※)ー 267,000円)×1% 44,400円
標準報酬月額26万円以下 年間所得210万円以下 57,600円 44,400円
低所得者 住民税非課税者 35,400円 24,600円
(※)総医療費は保険適用の医療費の総額(10割)
(出典:全国健康保険協会厚生労働省のホームページより筆者作成)

高額療養費制度では、年齢や収入により自己負担限度額が決められており、限度額を超えた部分は加入している健康保険や国民健康保険などから払い戻されます。例えば、健康保険加入で標準報酬月額が28万~50万円(70歳未満の場合)の方は、自己負担額が30万円になったとしても、高額療養費制度により、自己負担額は87,430円で済みます。さらに、1年間に3回以上高額療養費制度を利用すると、4回目からは「多数該当」にあたり、月に44,400円まで自己負担額が軽減されるようになっています。生活習慣病では治療が長引く病気もありますので、経済的な負担が心配になりますが、このような制度があることを知っておくと安心です。

但し、高額療養費制度の対象にならない費用もありますので注意しましょう。例えば、入院時の差額ベッド代や食事代、先進医療の保険診療にあたらない部分の費用などです。先進医療に対しては、先進医療特約が付帯できる保険商品もありますので、検討しても良いでしょう。

働けなくなった場合にカバーできる公的制度はある?

生活習慣病になり長期で仕事を休まなくてはならなくなった場合の収入減には、健康保険の「傷病手当金」である程度カバーできます。支給期間は、支給開始日から通算で1年6カ月間です。直近1年間の平均給与の約3分の2の傷病手当金を受け取ることができます。但し、自営業やフリーランスの方が加入する国民健康保険には、基本的にはこの制度はありませんので、ご自身の貯蓄などで備える他、民間の就業不能保険(所得補償保険)などの保険商品を検討しても良いでしょう。

生活習慣病に備える保険の選び方

入院が長引いたり治療費が高額になったりしても、公的な制度である程度は医療費の負担を抑えることができますが、高額療養費制度で賄えない差額ベッド代や先進医療などには預貯金や保険で備えておくと安心です。では、保険で備える場合、どのように保障内容を選べば良いのでしょうか。

カバー範囲を決めて保障内容を検討しよう

一般的な入院日額タイプの医療保険では、生活習慣病以外の病気やケガによる入院・手術などにも幅広く対応できますが、短期の入院だと受け取る給付金も少なくなります。

一方で、がん保険のように、がんと診断された場合に数百万円といった、まとまった金額の一時金が出る商品もあります。一時金はがんの治療費や差額ベッド代等に充てることもできますし、収入が減った場合の生活費に充てるといったこともできるでしょう。

また、一時金が出る対象を、がん、心疾患、脳血管疾患の「3大生活習慣病」に拡大した、いわゆる「3大疾病(特定疾病)保険」もあります。最近は、さらに対象を7大生活習慣病、8大生活習慣病などに広げた商品も見られます。

生活習慣病の範囲まで確認しよう

生活習慣病に備える商品では、保障対象となる生活習慣病の範囲を確認しましょう。例えば、「がん」は上皮内がんも支払い対象なのかどうか。また、「心疾患」全体が対象なのか、急性心筋梗塞だけなのか、「脳血管疾患」全体が対象なのか、脳卒中だけなのかなど、チェックしましょう。なるべく幅広い病気に対応している保険の方が安心ですが、その分保険料も高くなる場合もありますので、よく比較して検討しましょう。

給付金を受け取る条件もチェックしよう

また、一時金が支払われるための条件も様々です。例えば、がんは「病気の診断確定」が条件、急性心筋梗塞、脳卒中については、手術または入院が条件、急性心筋梗塞、脳卒中以外の心疾患、脳血管疾患は20日程度の入院または手術が条件となる商品が多くなっています。商品によっては病気の種類にかかわらず日帰り入院も含めた入院が条件のものもあります。どんな場合に支払われるかもチェックポイントです。

さらに、給付金が支払われる回数が、病気の種類によって無制限だったり回数制限がありつつも保障が続く商品もあれば、いずれかの保険金を受け取ったら契約が消滅するもの(3大疾病保険に多い)もあります。保険の加入を検討する際には、これらについても確認することが大切です。

このように、生活習慣病に備えて保険を選ぶ際は、最新情報もチェックしながらご自身の状況を踏まえ、公的な制度でカバーできない部分をどの程度補うかを決めて保障内容を比較しながら選ぶと良いでしょう。

  • この記事の情報は2022年6月1日時点のものです。
プロフィール

ファイナンシャルプランナー(CFP®)。一級ファイナンシャル・プランニング技能士。

福島佳奈美(ふくしまかなみ)

将来のお金の不安をなくすためには、長期的なライフプランを立てて将来のマネープランを作ることと、日々の家計管理が必要だと実感。保険、住宅ローン、教育費、老後資金準備など、「誰からも教わらなかったけれど生活するうえで必要なお金の知識」を、マネーコラム執筆やセミナー講師、個人相談などを通じて伝えている。

おすすめのコラム