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将来は3人に1人は認知症になる可能性も!早期発見で認知症に備える保険とは?

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公開日:2022年12月1日

高齢になると、誰もが認知症になる可能性があります。認知症は、初期段階で発見して対策をとれば、進行を遅らせることができるともいわれています。認知症がどのようなものなのかを知り、公的介護保険や民間の保険でできることを確認しておくと、認知症へ対応もスムーズになります。

認知症とは?どのくらいの人がなる?

「認知症」は、原因によって種類がいろいろあります。どのくらいの人が発症するのか、よくある「もの忘れ」とどう違うのか見てみましょう。

認知症とは?どんな種類がある?

認知症とは、脳の病気や障害など様々な原因により認知機能が低下し日常生活に支障が出ている状態のことをいいます。

認知症にはいくつか種類があります。一番多いものが、「アルツハイマー型認知症」で、脳の神経細胞が委縮し、ゆっくりと進行するのが特徴の一つといわれています。また、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害でおこる「血管性認知症」は、血管障害の部位によって症状が異なり、脳機能が正常に働く部分もあるため、症状が「まだら」に現れるのが特徴ともいわれています。他に、脳にレビー小体という物質がたまることが原因となる、「レビー小体型認知症」などもあります。

軽度認知障害(MCI)とは?

認知症と、加齢による「もの忘れ」は異なるものです。家族や友人など身近な人が気付く場合もありますが、初期の段階での区別は難しいでしょう。認知症の診断は医師の診察や検査によって行われます。

一般的には、認知症になる前に「軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)」という段階があります。2019年に厚生労働省老健局が発表した「認知症施策の総合的な推進について」によると、2012年時点でMCIの方は約400万人と推計されており、このうち年間10~30%の方が認知症に進行するといわれています。

MCIの方は、日常生活に支障のないものの、何かしらの認知症のサインが出ている状態といえます。MCIの段階で治療することで認知症への進行を遅らせることも可能だと期待されていますので、気になる症状が出たら早めにかかりつけ医や専門医に相談しましょう。

将来は3人に1人が認知症になる?

認知症は、高齢になればなるほど発症する可能性が高まります。2017年版高齢化白書によると、2012年の認知症高齢者数は462万人で、65歳以上の高齢者の約7人に1人(有病率15.0%)が認知症でした。また、認知症の有病率も年々高まっていることから、今後、有病率が高水準で推移した場合、下図のように今の40代の方が80代になる頃である2060年には高齢者の約3人に1人が認知症になる可能性があると推計されています。

65歳以上の認知症患者の推定者と推定有病率
(出典:内閣府「平成29年版高齢化白書(概要版)」

認知症と「もの忘れ」はどう違う?

認知症の症状で多い記憶障害は、加齢による「もの忘れ」と混同しがちです。「もの忘れ」は出来事の一部を忘れてしまうもので、ヒントがあれば思い出せるものですが、認知症の記憶障害は、出来事の全部が抜け落ちてしまっていて、ヒントがあっても思い出せないという違いがあります。他に、認知症では日付や場所を認識できなくなる、感情のコントロールができなくなる、被害妄想や徘徊、といった症状があります。このような状態になると、家族や周囲の人が見守る必要も出てくるでしょう。介護や支援が必要と判断されたら、公的介護保険も利用できます。

認知症になった場合に利用できる公的な制度

認知症になった場合の公的な制度にはどのようなものがあるか見てみましょう。

認知症でも公的介護保険が利用できる

認知症で公的介護保険の要介護や要支援と認定されると、公的介護保険を利用することができます。公的介護保険は、要介護度によって利用できるサービスには限度額がありますが、年齢や所得により、サービス利用料の1割~3割に自己負担は抑えられています。但し、限度額を超えてしまうと全額自己負担になります。

認知症の症状が強くなると自宅で過ごす場合でも限度額を超えるサービスを利用したり、介護保険対象外のサービスを利用する必要が出てきたりすることもあるでしょう。また、認知症対応のグループホームなどの施設に入居しなければならなくなる場合もあるため、介護費用の負担も大きくなる可能性があります。

医療費や介護費の負担が大きくなったら?

介護費の他にも、医療費も考慮しておきましょう。認知症で医療機関を受診して検査や治療を受ける他、入院が必要になる場合もあります。医療費は公的医療保険で自己負担割合が1割~3割に抑えられていますし、負担が大きくなったら医療保険制度の「高額療養費制度」で自己負担額を軽減することもできます。

介護費の負担が大きくなった場合には、市区町村の「高額介護サービス費制度」を利用すれば、毎月の自己負担額限度額を超えた分が払い戻されます。また、医療費と介護費の1年間の費用を合算して費用負担を軽減できる「高額介護合算療養費制度」もあります。

このように費用負担を軽減できる制度は複数ありますが、対象とならない費用もあるなど注意点もありますので、制度の内容をよく確認しておきましょう。公的な制度で賄えない部分は、預貯金などで準備する必要があります。

認知症保険を選ぶ際のチェックポイント

認知症には公的な制度で対応することも可能ですが、自身でも経済的な備えをしておくと安心です。その選択肢の一つとして、民間の認知症保険が注目されています。どのように選べばよいか、確認してみましょう。

認知症保険とは?

認知症保険とは、認知症の状態になった時に保険金が支払われる、民間の保険です。他に、一定の要介護状態になった時に保険金が支払われる民間の介護保険商品でも認知症に備えることは可能ですが、認知症保険では保障を認知症に絞っているのが特徴です。

保険金以外の内容もしっかりとチェック

認知症保険では、認知症の状態になった場合に100万円程度~数千万円程度の一時金が支払われたり、一定期間、年金が支払われる商品が多くなっています。この一時金や年金を、認知症になった場合の介護費や治療費などにあてることができます。また、認知症にならずに死亡した場合には死亡保険金が支払われる商品や、認知症による入院で給付金をもらえる商品もあります。

保険金を受け取れる条件は商品によって異なりますのでよく確認しましょう。例えば、「認知症の診断」のみで保険金が出る商品もあれば、「認知症と診断され、かつ公的介護保険制度における要介護度1以上の場合」のように、追加の条件がある商品もあります。

保険金の支払われるタイミングも様々で、所定の条件に該当すればすぐに保険金が支払われる商品もあれば、一定期間(3か月から6か月程度)、その状態が継続することが条件となる商品もあります。

保険というと、受け取れる保険金の金額に目が行きがちですが、そのほかの内容もしっかりと確認しておきましょう。

早期発見や予防に注目した認知症保険も

認知症にならないためには、運動や食事、娯楽などの生活習慣や、初期段階での対策が有効だと言われています。日頃からウォーキングや体操などで体を動かすようにすることや、バランスの取れた食生活、手先を使う趣味や脳トレゲームを行うなど、脳を意識的に使うことも取り入れたいものです。各自治体でも認知症予防のセミナーやイベントなどが行われていますのでチェックしてみましょう。

健康的な生活を送ることは認知症予防にもなりますので、定期的な健康診断を受けて体の健康状態を確認することは重要です。政府が2022年6月に発表した「骨太の方針案」には、国民皆歯科健診の具体的な検討が明記され、歯の健康の重要性が認識されましたが、全身の健康にもつながる、歯の健康も心掛けたいものです。

認知症保険は、認知症になった場合だけでなく、予防や重症化を防ぐためにも活用できる商品もあります。保障内容や保険料なども含めて総合的に判断すると良いでしょう。

  • この記事の情報は2022年6月10日時点のものです。
プロフィール

ファイナンシャルプランナー(CFP®)。一級ファイナンシャル・プランニング技能士。

福島佳奈美(ふくしまかなみ)

将来のお金の不安をなくすためには、長期的なライフプランを立てて将来のマネープランを作ることと、日々の家計管理が必要だと実感。保険、住宅ローン、教育費、老後資金準備など、「誰からも教わらなかったけれど生活するうえで必要なお金の知識」を、マネーコラム執筆やセミナー講師、個人相談などを通じて伝えている。

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