健康に不安がある女性でも、引受基準緩和型医療保険の女性疾病特約なら妊娠・出産、女性特有の病気に備えられる!
公開日:2024年6月28日
健康に不安がある女性にとって、心強い味方になってくれるのが引受基準緩和型医療保険です。従来は保障も特約も少ないものが主流でしたが、今では特約が豊富で、妊娠・出産、女性特有の病気に備えられる女性疾病特約もある商品が増えてきました。今回は、緩和型医療保険の選び方を女性目線でお伝えします。
引受基準緩和型医療保険とは
引受基準緩和型医療保険(以下、緩和型医療保険)とは、持病がある人や過去に入院・手術をしたことのある人向けの保険のことです。保険会社が契約を引き受けるときの基準を緩くすることで、通常の医療保険へ加入ができなかった人や、特定部位(疾病)不担保が付いた人などが加入しやすくなっています。
このような特徴があることから、緩和型医療保険はシニア層向けのものと思われがちです。しかし、たとえ若い女性であっても、子宮筋腫や子宮外妊娠のような異常妊娠、帝王切開などの異常分娩で入院や手術の経験があると、通常の医療保険に加入できないことや、加入できたとしても保障範囲が狭くなることがあるため、緩和型医療保険が選択肢となります。
告知項目が少なく、内容は保険会社によって異なる
保険に加入する際、通常の医療保険の告知項目が基本的に9項目であるのに対して、緩和型医療保険の告知項目は3、4項目と少なくなっています。特定疾病(がん、心筋梗塞、脳卒中)に関する特約や女性疾病特約を付けたい場合は、告知項目が1~3つ程増える商品もあります。なお、すべての告知項目で「いいえ」に該当すると加入できます。
(緩和型医療保険の告知項目の例)
|
上記はあくまで告知項目の一例で、保険会社によって「過去○年」という年数や病気の種類は異なります。がんや肝硬変の経験の有無については、一般的にどの保険会社も告知項目に入っています。一方で、精神疾患については、問われる病名が保険会社によって異なります。統合失調症やうつ病・躁(そう)病・アルコール依存症などの経験がある人は、告知項目の内容をしっかりと確認するようにしましょう。
商品によっては、告知項目が2つのものや、告知する過去の期間が1年以内のものなど、加入条件が緩い商品もあります。しかし、条件が緩い商品は、加入がしやすい一方で、保険料が高めに設定されていることや保障が少ないことがあります。したがって、告知が緩い商品を選ぶのは最後の手段にしたいところです。
保険料が通常の医療保険に比べて割り増しになっている
持病がある人や過去に入院・手術歴がある人は、給付金等を受け取る機会が増える可能性があります。そのため、保険会社は緩和型医療保険の保険料を通常の医療保険よりも高く設定し、給付金等の支払いに見合う保険料を契約者から受け取ることで、健全で公平な経営をしています。
従来タイプ VS 新しいタイプ
持病がある人ほど自分の健康状態に不安を感じ、医療費も気になっている人が多いため、近年は、各保険会社が緩和型医療保険の設計に力を入れてきています。その結果、保障や特約が充実している新しいタイプの緩和型医療保険が増えてきました。持病がある人にとって、保険料が割り増しになっているとはいえ、入院や手術にかかる費用全額を貯蓄から取り崩さなくもよい安心感は大きいでしょう。
では、従来タイプと新しいタイプでは、どのよう違いがあるのでしょうか(図1)。
<図1 従来タイプと新しいタイプの保障内容の比較>
特約・特則(※1)の名前は保険会社によって異なる
持病はどちらのタイプも保障される
緩和型医療保険は、持病が悪化した場合や過去に罹っていた病気が再発した場合でも、保障の対象になります。たとえば、加入する時点では、子宮筋腫があるものの経過観察中だったけれど、症状が悪化したことで手術が必要になり入院した、というような場合は給付金が受け取れるということです。ただし、契約前に医師から勧められている入院・手術は対象外です。
新しいタイプは給付金の支払削減期間がない
従来タイプの緩和型医療保険は、契約後から一定期間(通常1年間)は、持病を含むすべてのケガ・病気において、入院給付金・手術給付金などの給付金が50%に削減されるしくみになっています。一定期間を過ぎると給付金は100%受け取れます。しかし、新しいタイプの商品であれば、削減期間がありません。したがって、契約当初から、持病を含むすべてのケガ・病気において給付金が100%受け取れます。
新しいタイプは付帯できる特約・特則の数が多いあるいは豊富
基本保障に付帯できる特約・特則の数は、各保険会社によって実にさまざまです。従来タイプでは、先進医療特約以外に2、3つ程の特約が用意されていますが、新しいタイプは、先進医療特約はもちろんのこと、特約・特則の数が豊富で、とくに特定疾病(がん、心筋梗塞、脳卒中)に関する特約・特則が充実しています(ただし、特定疾病に関する追加の告知項目において、すべて「いいえ」に該当することが条件となります)。
このほか、通院特約や女性疾病特約などが用意されているものもあります。なかには、契約日から一定期間が経過するまでに受け取った入院給付金が所定の日数未満であれば、健康割引が適用されるものも。また、従来タイプは入院給付金と手術給付金が基本保障としてセットになっていますが、新しいタイプは手術給付金の有無を選べるものが多く、保障選びの自由度が高くなっています。
このように、従来からある緩和型医療保険の多くは、通常の医療保険に比べて保障の内容が見劣りします。その一方で、新しいタイプの緩和型医療保険のなかには、通常の医療保険と比較しても遜色のない保障設計となっているものがあります。
妊娠・出産の予定があるなら早めの加入を検討しよう
持病を抱えながら妊娠すると、病気が悪化することや流産・早産になること、帝王切開になることなどがあります。
たとえば、高血圧と関係のある持病を抱える人が妊娠すると、妊娠高血圧症候群になるリスクが上がります。服薬などの自己管理で血圧をコントロールできない場合や、胎児の発育が伸び悩んでいる場合などは入院が必要になることもあります。母体や胎児の状態によって入院期間は異なりますが、厚生労働省の調べによると、20歳~50歳未満で平均7~10日間ほどです(図2)。
<図2>
出典:厚生労働省「平成29年(2017年)患者調査」より(※2)
また、母体か胎児に何らかの問題が発生した場合は帝王切開となりますが、最新の調査結果では、すべての分娩件数の21.6%、つまり約5人に1人が帝王切開で分娩しています(※3)。
妊娠中は緩和型医療保険であっても加入できないことがあるため、妊娠・出産の予定がある人は、早めに加入するようにしましょう。
妊娠・出産の予定があるなら早めの加入を検討しよう
女性特有の病気や女性に多い病気には、次のようなものがあります。
仮に、これらが原因で入院した場合、どのような費用がかかるのでしょうか。
入院料と治療費の合計が高額になったとしても、同一月の入院であれば、高額療養費制度が適用されることも多いです。高額療養費制度の対象になると、年収が300万円の人なら自己負担の上限額は57,600円、年収がの人なら自己負担の上限額は87,430円です。全額自己負担になるものとしては、先進医療・・・交通費が高くなる場合などがあり、家計の大きな負担になることがあります。
もし、女性ならではの病気に備えたいと考えているなら、基本保障となる主契約の入院給付金を高く設定するよりも、女性疾病で入院したときに、入院給付金が受け取れる女性疾病入院特約を付けるほうが、保険料は安くすみます。
女性が罹るのは子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん、乳がんだけじゃない
女性が罹るがん(癌)といえば、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん、乳がんを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、女性が罹るがんは、それだけではありません。
確かに、20代後半~40代後半は子宮頸がんになる人、20代後半~50代後半は子宮がんになる人、乳がんは30代後半から急に増加し、40代前半~70代前半までは部位別で最も多いという特徴があります。しかし、50代後半からは大腸がんや肺がんになる人も増加し、大腸がんは70代前半から部位別で最も多くなっています(図3)。
<図3 女性の年代別・部位別のがん(上皮内がんを含む)罹患率(人口10万対)>
出典:厚生労働省「令和元年(2019年)全国がん登録 罹患数・率 報告」より(※6)
緩和型医療保険のなかには、女性特有のがん(上皮内がんを含む)以外のがん(上皮内がんを含む)で入院した場合でも、主契約の入院給付金に上乗せして、日帰り入院から給付金を受け取れる商品もあります。女性疾病特約を付けるなら、女性ならではの病気だけでなく、がん全般を保障してくれる商品を選ぶと安心です。
新しいタイプの緩和型医療保険のなかには、特約・特則があまりに豊富で、どれを付けたらよいのか迷ってしまうかもしれません。保障を手厚くできるからといって特約・特則をたくさん付けたり、各給付金の金額を高めに設定したりすると、それだけ保険料は高くなります。まずは、備えたいリスクに優先順位をつけて、給付金や特約・特則を選択しましょう。そして、どの程度だったら毎月保険料を支払い続けることができて、どの程度であれば貯蓄から取り崩しても問題ないのか、じっくりと考えたうえで、それぞれの保障額を決めるようにしましょう。
たとえば、妊娠・出産、女性ならではの病気に手厚く備えたいなら、女性疾病特約のある新しいタイプの緩和型医療保険に絞りましょう。また、1年以内に妊娠を希望している人や予定している人は、契約当初から給付金が100%受け取れる商品を選ぶことをおすすめします。
※1特約・特則はいずれも保障をより充実させることができるものですが、特約は、契約時だけでなく契約後も付帯できる場合があります。一方、特則は、契約時に付帯するかどうかを選択しますが、途中で付けたり外したりすることはできません。
※2 厚生労働省「平成29年患者調査 上巻(全国)
第46表 退院患者平均在院日数,性・年齢階級 × 傷病分類 × 病院-一般診療所別
平均入院日数は平均在院日数とする
平均在院日数 = 月間延べ入院患者数 ÷{(月間新入院数 + 月間退院数)÷ 2 }
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003318606
※3 厚生労働省 「令和2(2020)年医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況」
「表20 分娩件数の年次推移」の一般病院と一般診療所の分娩件数の合計に占める帝王切開娩出術の件数から算出
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/20/dl/02sisetu02.pdf
※4 厚生労働省「入院時の食事代の見直し」
住民税非課税世帯の人や、指定難病、小児慢性特定疾病の患者の人などの負担額は据え置き
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000117203.html
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000117331.pdf
※5 厚生労働省 令和3年(2021年)9月15日「中央社会保険医療協議会 総会(第488回)主な選定療養に係る報告状況」
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212500_00106.html
※6 厚生労働省「令和元年(2019年)全国がん登録 罹患数・率 報告」
表 3-1.年齢階級別罹患率(人口 10 万対,100 歳以上まるめ): 部位別、性別
B.上皮内がんを含む
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000942181.pdf
(ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級FP技能士、住宅ローンアドバイザー、定年力アドバイザー、相続手続カウンセラー)
中山弘恵(なかやまひろえ)
生活に関わるお金や制度をテーマにした講師業務、執筆業務、個別相談業務に従事。「わかりやすく丁寧なセミナー」「ストレスなく読み進められるわかりやすい文章」「安心しながら気軽に話せる相談相手」として定評がある。