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最近のがん治療法に合わせたがん保険選びとは?

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公開日:2022年12月1日

高齢化が進み、がん患者数は増加傾向にあります。一方で、手術・放射線治療・抗がん剤治療という「がんの3大治療」に加えて、免疫療法など新しい治療法や、新薬の開発など医療技術の進歩により、がん患者の生存率は伸びています。がん治療の選択肢が増える今、どのようながん保険を選べばよいのでしょうか。

最近のがん患者とがん治療法の動向

高齢化が進む日本では、2人に1人はがんになるというデータ(※)もありますが、がんは“不治の病”から“治療する時代”となってきました。最近のがん事情を確認しておきましょう。

高齢化に伴いがんの罹患数は年々増加

がんは加齢が原因の一つとも言われ、年齢が高くなるにつれて、がんと診断される人は増える傾向にあります。そのため日本では、がんと新たに診断された件数(罹患数)が年々増えています。

図表1:がん罹患数の年次推移
出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)、国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん罹患モニタリング集計(MCIJ))をもとに作成

一方で、医療技術の進歩やがん検診の受診率の増加などで、早期発見・早期治療が可能となりました。がんで亡くなる人は1995年以降は減少傾向で、がん患者の5年生存率は6割を超えています(※)。

  • 独立行政法人国立がん研究センターがん情報サービスの「罹患率」「年齢調整死亡率」「5年相対生存率」より

がん入院日数は短期化

「がんの3大治療法」とは、手術・放射線治療・抗がん剤治療を指しますが、以前は開腹・開胸手術や放射線治療など身体へのダメージが大きい治療法が中心でした。そのため回復までに時間がかかり、入院日数は長くなりがちでした。最近では、切り口の小さい切除手術や局所的に放射線をあてるなど、身体への負担が少ない治療法が増えています。また、抗がん剤などの薬物治療(化学療法)が増え、さらに免疫療法など新しい治療法も使われ、治療法の選択肢が広がっています。その結果、早く退院できたり、通院しながら治療するようになり、がん(悪性新生物)の入院日数は短期化しています(図表2・3参照)。

図表2:悪性新生物の退院患者における平均在院日数
図表3:悪性新生物の入院患者・外来患者数
出典:厚生労働省「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」(令和4年3月改訂版)をもとに作成

働きながらがん治療を続ける人は増加

入院の短期化や通院治療が可能となり、仕事を辞めずにがん治療を続ける人が増えています。2019年は10年前に比べて約1.4倍に増加しました(※)。しかし、治療のために休んだり、時短で働いたりするなど、収入面で不安を抱える人も少なくありません。

最近のがん保険の特徴

旧来のがん保険といえば、入院給付金(日数無制限)と手術給付金に加え、がん(悪性新生物)と診断されると一時金を1回だけ、または数回程度もらえる保険が一般的でした。しかし、入院が短期化し、治療法が多様化している現状では、入院と手術だけに手厚いがん保険では、がん治療にしっかり備えることは難しくなっています。また、がんの転移や再発に備えて、診断一時金も回数無制限で受け取れるがん保険が増えています。最近のがん保険の特徴を確認しておきましょう。

抗がん剤治療保障の充実

抗がん剤治療が増えたことに伴い、抗がん剤治療の保障が充実してきました。抗がん剤治療保障とは、抗がん剤治療を行った月に1回、5万円や10万円など契約した給付金額を受け取るタイプです。給付金の受取回数は120回までなど限度があるものと、制限のない商品があります。給付金の対象となる抗がん剤も商品によって異なり、中には未承認の自費診療の抗がん剤治療も対象とするがん保険もあります。

放射線治療保障の充実

放射線治療の保障は、旧来のがん保険では手術給付金の一部として扱う商品が多く、しかも60日に1回など支払限度が設けられている商品もあります。最近では、「がん治療給付金」などの名称で、手術や放射線治療、抗がん剤治療、中にはホルモン剤治療なども対象とし、所定の治療を行った月ごとに契約した給付金を受け取ることができる商品も出てきました。

なお、放射線治療でも陽子線や重粒子線といった副作用の少ない治療法は、以前は全て先進医療の対象で技術料は全額自己負担でしたが、徐々に保険適用となる疾患〈がんの部位や種類〉が広がっています。とはいえ先進医療として残っている疾患もあり、その場合は高額な費用がかかりますが、がん先進医療特約で保障されます。

がん緩和ケア保障の登場

がん緩和ケアとは、がんによる身体的な痛みや精神的な苦痛を軽減するための、医師や看護師などの専門家によるサポートを言います。近年は、その必要性が注目されています。緩和ケアとして、痛みを緩和する薬剤治療や神経ブロック(麻酔薬の注射)などで入院や通院、在宅療養をした時に給付金を受け取れる商品も登場しています。

上皮内がんの保障が充実

がんには、悪性新生物と上皮内がん(上皮内新生物)があります。上皮内がんはがん細胞が上皮細胞の中にとどまっている状態で、その下にある細胞には届いておらず、切除手術をすれば転移の可能性はないと言われています。そのため、がん診断一時金では、上皮内がんでは悪性新生物の保障額の1/10や1/2など少ないものや、保障の対象外とする商品もあります。しかし、加入者のわかりやすさや安心感から、悪性新生物と上皮内がんを同等に保障するタイプも増えています。

がん保険選びのポイント

がんになったら・・・という不安を抱える人でも、高額療養費などの公的医療保険制度により、医療費の負担はある程度抑えることができます。しかし、治療方法の選択肢が増える中、未承認薬などを使って積極的な治療を受けようとすると、医療費が高額になることも考えられます。さらに、治療中のQOL(生活の質)を上げるための支出が増えたり、治療を優先することで収入が減ったりするかもしれません。これらの経済的リスクにがん保険で備えるなら、今の時代にあったがん保険を検討しましょう。

あらゆる治療法に備えたい人は、がん診断一時金を充実させる

がんになったら積極的に治療したいと考える人や、QOL向上のためにお金を惜しみたくないという人は、まとまったお金を受け取れる診断一時金タイプのがん保険で備えましょう。一時金タイプなら治療法に限らず、公的医療保険適用外の薬や将来の新しい治療法にも備えることができます。ただし、一時金を手厚くすると保険料が高くなる可能性がありますので、家計への負担も考慮の上、必要な保障額を設定しましょう。

長引く治療が気になる人は、幅広いがん治療給付金タイプを選択する

一定の治療をした月だけに給付金を受け取るタイプの保険は、診断一時金タイプに比べて保険料がリーズナブルなのが一般的です。がんの3大治療(手術・放射線治療・抗がん剤治療)や緩和ケアなど幅広く保障するタイプなら、お金のことを考慮せずに治療法を選択することができます。また、再発や転移が気になるなら、支払いの限度回数は無制限の方が安心できるでしょう。なお、がん治療給付金とがん診断一時金の保障額をそれぞれ抑えて、組み合わせるのも一法です。

医療保険に加入している人は、重複する保障は外す

すでに医療保険に加入中の人は、自身の契約内容を確認してみましょう。一般的な医療保険は、入院日数に応じて入院日額1万円など給付金が支払われるタイプです。医療保険でもがんの入院を保障しますので、がん保険に入院保障がなくても心配要りません。一方、がんの通院は、オプションを付けない限り医療保険では保障されないのが一般的です。そのため、がん保険では入院の条件なく通院を保障するタイプを選ぶと安心できるでしょう。
また、医療保険に先進医療保障を付けていれば、がんの先進医療も保障されますので、がん保険にがん先進医療特約を付ける必要はありません。ただし最近では、未承認薬などをすぐに使いたい時に患者側から申し出て、認められれば全額自己負担で使用できる「患者申出療養」までがん先進医療特約でカバーするタイプもありますので、保障範囲を比べて選ぶのもよいでしょう。

最近のがん保険は、治療法や医療環境の変化に応じて保障内容が進化しています。これからがん保険を検討する人は、最新のがん保険の動向を確認しておきましょう。
すでにがん保険に加入している人も、今の保険で十分なのか?今の時代に合っているのか?これを機会に見直してみてはいかがでしょう。

  • この記事の情報は2022年5月20日時点
プロフィール

ファイナンシャル・プランナー(CFP®)

田辺 南香(たなべ みか)

大学卒業後リクルートに入社。社内ITコンサルタントからFPへ転身。心豊かな生活を実現するお金のコンシェルジュとして保険、住宅取得、老後資金等などのマネープランに関するアドバイス、執筆、セミナー講師などを中心に活動中。主な著書に、「未来家計簿で簡単チェック!40代から間に合うマネープラン」(日本経済新聞出版社)などがある。株式会社プラチナ・コンシェルジュ 代表取締役

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