生命保険とは?保険の種類や必要性、選び方などの基本をわかりやすく解説
公開日:2024年12月19日
生命保険は、将来起こるかもしれないリスクに備える手段のひとつです。日常の病気やケガ、万一の死亡などによる経済的ダメージを補てんしたり、教育資金や老後資金へ備えたりすることができます。しかし、商品の選択肢が多く、契約内容もそれぞれ異なるため、生命保険に「複雑」「むずかしい」といったイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では、生命保険の仕組みや種類、どうして必要なのかといった基本を紹介します。加えて、生命保険の選び方のポイントもわかりやすく解説します。
生命保険とは
そもそも、生命保険とはどのようなものでしょうか。まずは、生命保険の仕組みや特徴を把握しておきましょう。
生命保険は「相互扶助」による助け合いの仕組み
生命保険は、事故や病気などで亡くなったり、病院で治療を受けたりした際に、支払った保険料や契約内容に応じた金額の「保険金」がもらえる金融商品です。病院の治療費による支出増加や、家族の稼ぎ頭が亡くなったことによる収入減少などの経済的ダメージを補うことができます。
しかしなぜ、支払った保険料よりも高い保険金がもらえることがあるのでしょうか。それは、生命保険の仕組みが、保険加入者同士がお互いを支え合う「相互扶助」で成り立っているためです。多数の保険契約者が公平に保険料を出し合うことで、事故や病気で大変な状況になった少数の契約者を助ける保険金を準備しているのです。
<保険の仕組みは助け合い(=相互扶助)>
資料:執筆者作成
このように、生命保険に加入する主な目的は、万が一へ備えるためです。ただし現在は、比較的頻繁に発生する病気やケガに対しても保障が得られるなど、保障範囲が広がっています。また、将来の教育資金や老後資金に備えることを目的とした貯蓄性の高い商品も増えているため、色々な場面で活用できるようになっています。
生命保険の保障は「四角」
万一のときの経済的ダメージに備える方法としては、生命保険のほかにも、「貯蓄」という手段があります。ただし、保険と貯蓄とでは大きな違いがあるため、上手に使い分けることが重要です。
貯蓄・・・働きながらコツコツお金を貯めて、少しずつ増やしていくものです。いつでも引き出せる一方で、万が一のときに十分な金額が貯まっていない危険性があります。
保険・・・保険に加入するとすぐに保障が得られます。貯蓄のような自由さはなく、保険料を支払う必要がありますが、予測できないリスクに対して高額な保障も得ることができます。
<貯蓄での備えは「三角」、保険での備えは「四角」のイメージ>
資料:執筆者作成
つまり、さまざまな経済的リスクに耐えられるほどの貯蓄があれば、保険は不要かもしれません。しかし、あらゆるリスクに備えられるほどの貯蓄が貯まっている人は限定されるでしょう。そのため、リスクへ備える手段としては、保険が向いているといえるのです。
生命保険の必要性
生命保険文化センターの調査を見ると、毎年変動はあるものの、日本人の9割が、なんらかの生命保険に加入していることが分かります。
<生命保険の世帯加入率(個人年金保険を含む)の推移>
出典:生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査「(2021年度)」
将来、何が起こるかを確実に予測することは不可能です。家具や家電の故障といった小さな被害であれば貯蓄を取り崩すことで対応しやすいでしょうが、「一家の大黒柱が亡くなった」「病気で長期間入院することになった」といった大きな収入減や、大きな臨時出費があると、貯蓄だけでは補いきれない家庭が多いのではないでしょうか。
今は多種多様な生命保険があるため、欲しいと思う備えが得やすい時代といえます。ご自身の価値観やライフプランに合わせて、目的に合う商品を選んで加入するようにしましょう。
生命保険の種類とそれぞれの特徴
生命保険の種類は、大きく分けると3つに分けられます。
①万が一へ備える保険
ご自身や家族に万が一のことがあったとき、遺された家族の生活を経済的に支える目的の保険です。亡くなった際に、遺族が保険金を受け取ることができます。保険商品としては、定期保険、終身保険、利率変動型積立終身保険、養老保険、収入保障保険などがあります。
②病気やケガに備える保険
ご自身や家族が病気やケガをしたとき、入院や手術、介護にかかる費用をまかなう保険です。入院したときや特定の病気と診断されたときなど、保険に定められた条件に当てはまる事由が発生すると、保険金を受け取ることができます。具体的には、医療保険、がん保険、特定疾病保障保険、介護保険、就業不能保障保険などがあります。
③将来必要な資金に備える保険
教育資金や老後資金など、まとまった金額を準備するための資産形成を目的とした保険です。保険料の一部が積み立てられるため、万一のときの保障が得られることに加えて、満期時や解約時にお金を受け取ることができます。老後資金に備える個人年金保険や、教育費に備えるこども保険などがあります。
生命保険の選び方
次は、生命保険を選ぶときのポイントを解説します。
どんなリスクに備えるかを明確にする
生命保険には、幅広いリスクに対応できるさまざまな商品があります。そのため、まずは「どんなリスクに備えるか」を明確にして、目的に見合う保険を選ぶことが大切です。
想定されるリスクは、家族構成やライフステージなどにより異なります。例えば、社会人になって親から自立すると、病気やケガをしたら、治療費の発生や働けないことによる収入減少により、家計状況が悪化するリスクがあります。小さな子どもがいる人なら、もしご自身が亡くなっても子どもが困窮しないよう、生活費や教育費を残すことを考えておきたいところです。また、働いている間に、退職を迎えた後に必要な老後資金の準備を始めておくと安心でしょう。
保障に必要な期間を考える
保険を大きく分けると、一定期間の保障が得られる「定期タイプ」と、一生涯保障が続く「終身タイプ」があります。
一生涯の保障があれば安心でしょうが、必要な時期を見極めて定期タイプを選ぶことで、保険料が抑えやすくなります。例えば、子どもの生活費や教育費に困らないように手厚い死亡保障が欲しい場合は、子どもが独立するまでの期間だけ保障する定期タイプの保険で十分備えられます。このように、ご自身が保障を必要とする期間を考えて、保障期間を決めましょう。
適切な保障額を導き出す
保障額は高いほど安心ではあるものの、高すぎると保険料の負担が大きくなります。そのため、加入する目的に合わせて、適切な保障額を導き出すことが大切です。
まを考え、そのうち「公的保障や預貯金でいくら補てんできるか」という順番で考えましょう。公的保障には、病気やケガなら傷病手当金や高額療養費制度、万が一の死亡時には遺族年金があります。例えば次の図のように、死亡保険に加入するときはご遺族の今後の収入と支出を予想し、不足する分を必要な死亡保障額と考えます。公的保障で補てんできる金額は、加入している公的年金制度や医療保険制度によって異なるので、ご自身の場合はいくらなのかを確認することが大切です。
<一家の大黒柱の死亡リスクに備える際の必要保障額のイメージ>
資料:執筆者作成
無理のない保険料と払込期間を設定する
生命保険は心強い存在ですが、保険料が家計を圧迫する事態は避けたいものです。さまざまなリスクに備えておきたいところでしょうが、無理なく支払える保険料にすることを忘れないことが大切です。
保険料を抑えるポイントは、第一に、必要最小限の保障内容にすることが挙げられます。得られる保障金額を下げれば、保険料は抑えられます。ただ、必要であるにも関わらず保障額を引き下げるのはおすすめしません。保障額を減らしたくないときは、「保障期間」や「払込期間」に目を向けてみましょう。例えば、一生涯の保障が得られる終身保険よりも、保障期間を限定している「定期保険」のほうが保険料は抑えやすいです。また、払込期間が長い「終身払い」を選択すると、毎月の保険料は引き下げやすくなります。
生命保険の加入前に確認しておくべきこと
最後に、生命保険に加入する前に把握しておくべき注意点を3つ紹介します。
健康状態によっては希望どおりに契約ができない場合もある
生命保険は、加入時に健康上の問題があると、生命保険会社が申し込みを引き受けてくれないことがあります。なぜなら、相互扶助が大原則となっているため、契約者間の公平性が重視されるからです。
ただし、健康状態に不安があると必ずしも保険に加入できないとは限りません。商品や症状によっては、保険料の割増や保険金の減額などの条件付きで契約できることがあります。ご自身の病歴などを踏まえて、加入できる保険を探してみてください。
また逆に、健康状態の良い人やタバコを吸わない人などを対象に、割安な保険料で契約できる「リスク細分型」の仕組みを導入している商品もあります。健康状態が良い人は、こうした保険を選ぶと保険料が抑えやすくなるので、商品を探すときに意識しておくと良いでしょう。
告知義務違反に当たらないように注意する
生命保険に加入する際、契約者または被保険者は、保険金の支払事由に強く関係している健康状態のことなどを保険会社に告知する義務があります。もしも告知義務違反があった場合は、責任開始日から2年以内であれば、保険会社は契約を解除できます。また、深刻な内容だと判断されれば、保険金が支払われない恐れもあります。そのため、保険に加入する際に保険会社から聞かれた質問には、正確に答えるようにしましょう。
さまざまな保険会社の商品を比較検討する
日本には数多くの生命保険会社があり、同じような条件の商品でも、保険会社によって保障や保険料に違いがあります。そのため、契約する前に、複数の保険会社の商品を比較検討することが大切です。
契約内容によっては、保険料に大きな差が出て、家計への負担が変わる可能性もあります。手間に感じるかもしれませんが、少なくとも2社以上を比較して、割安な保険料で十分な保障が得られる商品を選びましょう。
まとめ
生命保険とは、大勢の人がお金を出し合って助け合うことで、将来起こり得るリスクに備えるものです。万が一のとき、病気やケガをしたとき、まとまった資金の準備をしたいときなど、ご自身や家族の状況に合わせて保険を選びましょう。
「何に備えたいのか」という目的を明確にすることが、適正な保障を得ることや、保険料を必要最小限に抑えることにつながります。
ご自身の価値観やライフプランに合った保険を選び、リスクにきちんと備えることで、安心して生活を送れるようにしましょう。
※この記事の情報は2024年11月時点
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プロフィール
ファイナンシャル・プランナー(AFPⓇ)。FP事務所マネセラ代表。(https://manesera.com/)
張替 愛(はりかえ あい)
「ひとつひとつの家庭にとっての最善策」を探すことを大切に、金融商品を販売せずに、年間100回近く家計相談を行う。専門分野は教育費・住宅購入・資産運用・ママのキャリアなど。コラム執筆や監修、オンラインマネー講座などでも活躍。2児の母でもある。
著書『~共働き800万円以下の夫婦でもハッピーライフ~プチ贅沢を楽しみながらムリなく資産を増やす』(ビジネス教育出版社)