生命保険に1,500万円も必要ある?適正な保険金額を教えます!
公開日:2024年12月19日
生命保険に加入しようかなと思った時に、「いくらの保険に入ればいいの?」「保険金額はいくらにすればいいの?」と悩む人が多いようです。適正な保険金額は、年齢や家族構成、ライフスタイルなどによって変わってきます。そのため、同じ人でも10年前と今とでは、適正な保険金額は違ってくるわけです。では、自分に必要な現在の保険金額を、どのようにすれば知ることができるのか、考え方について解説していきます。
生命保険の適正な保険金額は?
自分にとってぴったりな生命保険に入りたいと思った時に、以下の3つのポイントで考えてみるのが良いでしょう。
<ポイント1>何を目的とした保険なのか?
保険は健康上の理由から、「ある状態」になった時に保険金を受け取るという契約ですから、その目的によって加入すべき保険の種類が異なります。もしも、亡くなってしまったら…というのであれば死亡保険、もし病気やケガによる入院や治療費に備えるなら医療保険やがん保険、介護が必要になった時を心配するなら介護保険、退職後の生活費に備えるなら個人年金保険など、加入すべき保険が変わってきますから、まずは保険に入る目的を決めます。
<ポイント2>誰のための保険か?
自分が<ポイント1>で考えた「もしも・・・」が起きたら、誰の生活を守りたいのかを考えてみましょう。例えば、シングルなら自分自身のため、結婚しているならパートナー(配偶者)のため、お子さがいるなら子どものためなどをイメージします。保険の目的に応じて、誰のために、いつまで保険でカバーすべきかを決めます。
<ポイント3>どのくらいの保障が必要か?
保険でカバーする範囲が決まると、もしもの時に必要なお金がみえてきます。そこから公的医療保険や公的年金などでカバーされる金額がわかりますから、その差額が「もしもの時に足りないお金」、つまり必要な保障額であり、保険で備えたいお金です。貯蓄があれば、その分は差し引けますから、保険で備えるお金は少なくて済みます。
生命保険の平均的な保険金額
生命保険文化センターの調査※によると、死亡保険に加入している全世帯の保険金額の平均額は2,027万円です。年齢別にみると、40代後半まで徐々に上昇、50代以降は下がっています(図版Ⅰ)。必要な保険金額は、理論的には一番下の子どもが生まれた直後が一番多くなるはずですが、実態は子どもの教育費が現実的に見えてくるタイミングや、住宅購入時に万一の時のローン返済に備えて、死亡保障を手厚くしている可能性があります。
※「普通死亡保険金」とは、病気などで亡くなった場合に受け取る保険金(不慮の事故や災害、感染病が原因の災害死亡保険金を除く)
<図表Ⅰ世帯普通死亡保険金額(全生保)(世帯主年齢別)>
資料:公益社団法人生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」よりネオファースト生命作成
世帯収入別にみると、世帯収入が高いほど、保険金額も高くなる傾向があります(図表Ⅱ)。収入が高いほど、普段の支出が大きくなりがちなので、もしもの時に急に生活費や教育費などの支出を抑えることは難しいと考える人も少なくありません。
<図表Ⅱ 世帯の普通死亡保険金額(全生保 )(世帯年収別)>
資料:公益社団法人生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」よりネオファースト生命作成
1,500万円の保険金額が適しているのは?
では、保険金額をどのくらいに設定している人が多いのでしょうか?保険金額の平均値は2,027万円ですが、(図表Ⅲ)の分布をみると、「不明」を除くと1500万円以上と1,500万円未満が同じくらいの割合です。つまり、1,500万円あたりが中央値、保険金額を小さい金額から並べてみた時の真ん中あたりになるわけです。
<図表Ⅲ 世帯の普通死亡保険金額(全生保)>
しかし、小さなお子さんのいる世帯では、教育費や生活費の負担が大きく、1,500万円で十分とは言い切れないかもしれません。教育費は幼稚園から大学まで、すべて公立でも約800万円、すべて私立なら2,000万円以上もかかると言ったデータもあります。いっぽうで、子どもがいない世帯や、既に子どもが独立した後の夫婦ふたり暮らしなどでは、1,500万円で十分という場合もあるでしょう。
実際に、<図表Ⅰ>の世代別の保険金の平均値でも、世帯主の年齢が30~34歳世帯では2,516万円、65~69歳世帯は、1,478万円となっています。
生命保険1,500万円の保険金額にかかる税金
相続人が死亡保険金を受け取った場合、生命保険には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。例えば、「保険契約者=被保険者」である本人が亡くなり、配偶者と子ども2人が遺された場合、法定相続人が3人なら「500万円×3人=1,500万円」となります。そのため、受け取った保険金が1,500万円なら、相続税の課税対象にはなりません。
しかし、保険契約者(保険料を支払った人)と被保険者(保険の対象者)、受取人(保険金を受け取った人)の関係性によって、税金の種類が異なります。図表Ⅵのように、保険契約者と被保険者が異なる場合は、所属税や贈与税の課税対象となるため、「法定相続人3人なら1,500万円までは税金はかからない」と一概は言えませんので、注意が必要です。保険の目的に応じて保険料を決めた上で、税金も考慮の上、保険契約者・被保険者・受取人を決めましょう。
<図表Ⅵ 死亡保険金の税務上の取扱い(契約形態と課税の種類)>
資料:ネオファースト生命作成
※税務の取扱い等については、2022年7月現在の税制・関係法令等にもとづき記載しております。個別のケースにおける税務の取扱い等については、所轄の税務署等にご確認ください。
まとめ
生命保険の死亡保険金が1,500万円で足りるかどうかは、年齢や家族構成、パートナーの収入、将来実現したいライフイベント、現在の貯蓄額、働き方(公的保障や勤め先からの保障)などによって、大きく変わってきます。平均値などは目安として参考にするものの、ご自身の状況で適正な保険金額を試算してみましょう。
そして、一度試算した保険金額も時間の経過や家族の状況の変化によって変わっていくものですから、大きなライフイベントを終えた後など、節目、節目で試算し直し、保険を見直すことをおすすめします。
- ※この記事の情報は2024年11月時点
ファイナンシャル・プランナー(CFP®)
田辺 南香(たなべ みか)
大学卒業後リクルートに入社。社内ITコンサルタントからFPへ転身。心豊かな生活を実現するお金のコンシェルジュとして保険、住宅取得、老後資金等などのマネープランに関するアドバイス、執筆、セミナー講師などを中心に活動中。主な著書に、「未来家計簿で簡単チェック!40代から間に合うマネープラン」(日本経済新聞出版社)などがある。株式会社プラチナ・コンシェルジュ 代表取締役