休業補償とは?生命保険の就業不能保険と収入保障保険の違いを徹底解説
公開日:2024年12月19日
民間の保険にも「休業補償」があると聞いて、どのような保険か気になっている人もいるのではないでしょうか。病気やケガで働けなくなった時に心強い保険ですが、保険の種類によって保障内容に違いがあります。この記事では、休業補償の基礎知識や、就業不能保険と収入保障保険の違いも解説していきます。働けなくなった時に役立つ保険について、理解を深めたい方は是非参考にしてください。
生命保険の休業補償とは
休業補償とは、病気やケガで働けなくなった時の収入減を補てんする補償をいいます。公的な保険をイメージする人もいるかもしれませんが、民間の保険にも働けない時に心強い保険があります。
違いを理解するためにも、主に会社員や公務員が加入する労災保険(労働者災害補償保険)と健康保険の働けない時の保障を確認しておきましょう。労災保険では、業務中や通勤途中のケガや病気が原因で働けない場合の賃金を補償し、休業補償給付を受け取れます。業務上以外の理由で働けなくなった場合は、健康保険の傷病手当金を受け取ることができます。ただし、休業補償給付はそれまでの賃金の80%(特別支給20%含む)までですし、傷病手当金なら60%までしか補てんされません。傷病手当金は、支給期間は休み始めから4日目から最長1年6カ月までです。それを超えてもなお障害が残る場合は、加入する年金制度や障害の程度によって該当する年金が支払われる場合がありますが、休業補償給付金や傷病手当金よりも少なくなる可能性があります。
なお、労災保険は企業などに雇われている労働者のための制度ですが、これまでもIT関連や個人タクシー業者など特定の職種の自営業者・フリーランスの人には加入が認められ、補償を受けることができました(特別加入制度)。2024年11月から加入できるフリーランスの対象が広がり、企業などから業務委託を受けて働く人 は、自分で保険料を支払えば労災保険に任意で加入できるようになりました。しかし、フリーランスの人が加入する国民健康保険には傷病手当金はありませんので、休業補償という面では働き方による差があります。
【働けない時の公的な保障】
一方、民間の休業補償の保険は、働き方や職業による加入制限も少なく、保障額の自由度も高いので、公的な保障だけでは足りないと思う人は、民間保険を検討すると良いでしょう。
就業不能保険・収入保障保険・所得補償保険
働けなくなった時に保障を受けられる生命保険には、就業不能保険や収入保障保険があります。その他に、損害保険会社が扱う所得補償保険もありますので、それぞれの違いを解説します。
就業不能保険とは
就業不能保険とは、病気やケガで入院や自宅療養するなど、働けない状態が一定期間続いた時に、年金または一時金を受けられる保険です。病気やケガが長期化して、収入が減ってしまうリスクに備えることができます。公的な保障が少ない人ほど、検討したい保険と言えるでしょう。
なお、保障を受けるには一定の「就業不能状態」や、「支払対象外期間」など給付の条件がありますが、その定義は商品によって異なります。例えば、「就業不能状態」には精神疾患を対象とする・しないといった違いや、「支払対象外期間」が30日や60日、またはその期間がない商品もあります。事前によく比較して、納得できる商品を選ぶことが大切です。
収入保障保険とは
収入保障保険とは、死亡または高度障害になった時に、満期まで「毎月〇万円」など年金形式で受け取れる保険です。そのため、自分にもしものことがあった時に、家族の生活を支える収入を保障できます。高度障害とは、両眼の視力や言語や咀嚼(そしゃく)機能を完全に失うなど、一般的に回復の見込みのない状態をいいます。
収入保障保険の中には、オプションを付けることで、所定の障害状態や介護状態、またはがんや急性心筋梗塞、脳卒中といった三大疾病になった時にも年金を受け取れる保険もあります。商品によって、年金を受け取れる条件(支払事由)は異なります。もしも、幅広くリスクに備えたいなら、このようなオプション付きの収入保障保険を活用するか、または死亡に備える収入保障保険と特定の疾病に限らず働けない状態に備える就業不能保険を組み合わせて備えると良いでしょう。
収入保障保険の中には、死亡保障を外して障害状態や介護状態などで働けない時の保障に限定できる保険もありますので、保険の名前だけでなく、しっかり内容まで確認すると良いでしょう。
所得補償保険とは
所得補償保険とは、就業不能保険と同様に病気やケガで働けない期間の収入を一定額補償する保険です。主に損害保険会社で扱っています。就業不能保険は、保険期間が例えば65歳や70歳までなど、現役で働く期間を想定して、比較的長く設定できるのに対して、所得補償保険は1~2年など短い商品が多く、それ以降も継続したい場合は保険契約を更新します(中には長期で設定できる商品もあります)。なお、所得補償保険にも4日間や7日間など支払対象外の期間(免責期間)があります。それを超えて働けない状態が続いた場合に、最長で1カ月や1年など契約で決められた期間は保険金を受け取れます。これをてん補期間と呼びます。
生命保険の休業補償に関する注意点
このように働けない時に備える保険にはさまざまなタイプがあり、商品ごとに細かな違いがあります。以下のような点をしっかり確認しましょう。
【チェックポイント】
・どのような状態や原因で(支払事由)・いつまで(何回)・いくらの保険金(給付金額)をもらえるのか
・精神疾患は対象か否か
・働けなくなっても保険金をもらえない期間(支払対象外の期間、免責期間)が何日あるのか
・保険金額が減額される期間があるか否か(たとえば、休業から1年間は設定金額の50%給付など)
・支払事由に該当した以降も保険料負担は継続するのか、免除されるのか
・自分の年齢・性別で保険料はいくらか
・保険料はずっと変わらないのか、それとも年齢とともに上がるのか(保険期間)
必要な時に保険金を受け取れないということのないように、納得の上で加入することが大切です。また、余分な保険料の負担をなくすためには、公的な保険や既に加入している保険の内容も確認して、保障の重複をなくしましょう。また、カバーされる範囲が広く、受け取る保険金が多くなるほど保険料は高くなりますので、保障と保険料のバランスもよく検討しましょう。
まとめ
生命保険にも、働けない時を保障するさまざまな保険があります。しかし、商品による違いも大きいため、「どのようなリスクに備えるか」といった加入の目的を決めた上で、商品を絞り込みましょう。そして、上記に示した【チェックポイント】を参考に商品を比較した上で、選びましょう。
※この記事の情報は2024年11月時点
ファイナンシャル・プランナー(CFP®)
田辺 南香(たなべ みか)
大学卒業後リクルートに入社。社内ITコンサルタントからFPへ転身。心豊かな生活を実現するお金のコンシェルジュとして保険、住宅取得、老後資金等などのマネープランに関するアドバイス、執筆、セミナー講師などを中心に活動中。主な著書に、「未来家計簿で簡単チェック!40代から間に合うマネープラン」(日本経済新聞出版社)などがある。株式会社プラチナ・コンシェルジュ 代表取締役