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医療保険加入時に告知する既往歴とは?既往症や持病との違いも解説

# FP監修
# 保険の基礎知識
# 選び方

公開日:2025年1月6日

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一般的な医療保険に加入する際には、健康状態について正しく告知する必要があり、基本的に既往歴(病歴)についても告知が必要です。なぜなら、保険は加入者が公平に保険料を負担することで成り立っているしくみだからです。そのため、既往歴がある場合に、加入できない医療保険もあります。本記事では、既往歴の概要や医療保険の選び方について解説します。

    既往歴とは?既往症や持病との違い

    既往歴とは、これまでにかかったが、既に完治している病気やケガ(既往症)の履歴(記録)のことで、病歴とも呼びます。既往症は、過去に定期的または継続して治療や薬をもらうために病院に通ったり、入院、手術を受けたりしたものの、今は完治している病気やケガのことです。 

    「私には持病がある」など持病という言葉もよく使われますが、持病は治療中でまだ完治していない基礎疾患や慢性疾病といった病気やケガのことをいい、その記録を現病歴といいます。つまり、既往歴と既往症はほぼ同じ意味で使われますが、治療中の持病とは異なります。

    既往歴に記載する内容

    医療保険などの加入手続きの際に、既往歴を問われた場合、どのような疾病や内容を告知・記入すればよいのでしょうか。 

    ・完治した病気やケガ
     既に治療済の病気やケガについて、入院歴、手術歴、通院歴(投薬歴や治療歴)、健康診断や人間ドックなどでの指摘事項などが含まれます。過去何年分について答えるかは、保険会社によって異なります。告知に該当する場合は、部位や疾病・手術名、検査結果、その時期などを告知書に記載します。 

    骨折や妊娠中のトラブルでの入院や帝王切開なども対象となり、告知が必要です。一方で、風邪やインフルエンザ、下痢や食あたりなど、一過性のもので後遺症が残る心配のない病気などは含まれません。

     ・処方された薬により起こった副作用
     過去に処方された薬を飲んで、発疹が出た、発熱した、呼吸が苦しくなった、などの副作用があった場合についても告知します。

     ・アレルギー
     喘息、アトピー性皮膚炎や接触性皮膚炎、湿疹などのアレルギー性疾患も告知の対象になります。 

    その他に、病気ではありませんが、既往歴と合わせて妊娠や障害の有無、仕事内容なども告知書に記載します。妊娠中の場合は妊娠週間や健康状態についても告知します。また、喫煙の有無も問われる場合があります。

    医療保険の加入時に既往歴や現病歴の告知が必要な理由

    医療保険に加入しようとした場合に、一般的に既往歴や現病歴について正しく伝える義務があります。これを「告知義務」といい、それに反して既往歴や現病歴があるのを隠したり、虚偽の告知をしたりすることを「告知義務違反」と呼びます。 

    保険は、加入者が公平に保険料を負担することで、成り立っている助け合いの仕組みです。年齢や性別ごとにリスクの大きさを予測し、それに見合った保険料が設定されています。既往歴のある人が、健康な人と比べて既往症を再発したり、既往症と因果関係の深い病気を発症したりする確率が高ければ、保険金を受け取る可能性も高くなります。これでは公平とは呼べませんので、加入者のリスクができるだけ均一になるような母集団を作るために、告知義務があります。 

    なお、告知する項目や提出する書類は、保険会社や加入する保険商品によって異なります。商品によっては、医師の審査が必要となる場合があります。 

    告知義務違反をするとどうなる?

    「既往歴なんて、黙っていればバレないだろう」と思う人もいるかもしれませんが、保険会社による調査などによって、告知義務違反が判明するケースは少なくありません。たとえば、入院や手術後に保険金を受け取りたいと申請した際に、保険会社は該当する病院へカルテの確認や、公的な健康保険の利用履歴の調査を行う場合があります。それによって、保険加入前から通院していた、以前から手術を勧められていたなどの事実が判明するケースがあります。告知義務違反に該当すると、保険金を受け取れなかったり、契約を解除されてしまったりする可能性がありますので、虚偽の申告は避けなければなりません。

    既往歴や現病歴によっては医療保険に加入できない場合がある

    既往歴や現病歴があると、他の健康な人よりも入院や手術の可能性が高いとみなされ、一般的な医療保険に加入できない可能性があります。ただし、既往症でも疾病の種類や完治して何年経っているかなど、加入できる基準は保険会社によって異なります。各社の加入条件を調べて、加入できそうな保険を検討しましょう。

    既往歴があっても加入しやすい医療保険の選び方

    健康な人向けの医療保険にそのままでは契約できない場合でも、医療保険に加入する方法があります。「特別条件付き契約」「引受基準緩和型保険」「無選択型保険」の3つについて、順にご紹介します。

    特別条件付き契約

    健康な人向けの医療保険に、特定の条件や制限を付けて加入する方法です。その条件は、保険会社によって異なりますが、主に4つのタイプがあります。

    ・保険金・給付金削減
    保険会社から支払われる保険金や給付金が、契約から一定期間は削減される方法です。たとえば入院日額1万円、手術給付金20万円の保険に、「契約から2年間は入院・手術給付金50%削減」という特別条件で加入した場合、2年以内に10日間入院すると、「1万円×10日間×50%」で入院給付金は5万円となります。 

    ・特別保険料領収
    契約者が通常の保険料に、保険会社が定めた「特別保険料」を上乗せして支払う方法です。上乗せ期間は、保険料を払い込み終えるまで、終身保険なら最後までずっと続くというのが一般的です。

     ・特定疾病・特定部位不担保
    保障の対象から、身体の特定の部位や疾病を外す方法です。「不担保=保障されない」という意味です。
    「子宮筋腫」や「胃がん」が特定疾病に該当するのに対して、特定部位とは「子宮」や「胃」のことを指し、その部位に関する全ての疾病が保障の対象外となります。例えば、子宮がんと診断された場合、特定疾病不担保が「子宮筋腫」のみなら給付は受けられますが、特定部位不担保が「子宮」なら、給付は受けられません。なお、不担保期間は、契約から1~5年など一定期間に限られる場合と、加入期間中ずっと終身で付く場合があります。 

    ・特定障害不担保
    特定の障害状態に対して、保険会社は高度障害保険金を支払わない、または保険料の支払免除を行わないことをいいます。特定の障害状態とは、保険会社が約款で定める視力障害や聴力障害などを指します。

     特別条件付きでの契約が可能かどうかや上記のようなタイプは、保険会社や商品によって異なります。また、その条件もさまざまです。

    引受基準緩和型保険

    引受基準緩和型保険とは、健康な人向けの保険よりも加入条件が緩和され、既往歴や現病歴に関する告知項目が3つ~5つ程度と少ないため、「既往歴や持病のある人でも入りやすい保険」のことです。告知の数が限られることから「限定告知型」と呼ばれることもあります。引受基準緩和型保険は、健康な人向けよりも保険料が高めに設定されていたり、保障額の上限が低めに設定されている場合があります。なお、契約後1年間など一定期間は給付金額が50%などに削減される商品もありますが、最近の引受基準緩和型医療保険では、支払削減期間がなく、契約後すぐに満額給付される商品も増えてきました。 

    告知項目は過去3カ月~5年程度の期間に、入院や手術を受けたかどうか、または医師より入院や手術をすすめられたかどうかなどを問うものが一般的です。具体的な例をみてみましょう。

    例 <ネオファースト生命 引受基準緩和型医療保険 「ネオdeいりょう 健康プロモート」の告知項目>
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    この場合、項目1~3全てが「いいえ」に該当すれば申し込みは可能となります。項目3は、「はい」に該当した場合でも、詳細の告知をすることで、加入できる可能性があるというものです。なお、項目1のがん・肝疾患・精神疾患・腎疾患については、対象となる疾病を別表に示しています。また、がんや特定疾病の保障を手厚くしようと特約を付加する場は、告知項目が2つ追加されます。

    このように、引受基準緩和型医療保険は告知項目が明確で、加入できるかどうかがわかりやすくなっているのが特徴です。もし、既往歴や現病歴があり、健康な人向けの保険の加入が難しい場合は、自分の病歴などと各保険会社のパンフレットやホームページで告知項目を比較してみましょう。

    無選択型保険

    無選択型保険とは、契約時に既往歴や現病歴について告知する必要がなく、また医師の診査も不要、つまり「誰でも入れる保険」です。その分、引受基準緩和型保険よりもさらに保障の上限額が低く、保険料が割高なのが特徴です。無選択型医療保険の場合、契約後90日間など一定期間内に入院しても、給付金が支払われないなど制限があります。 

    なお、医療保険の場合、引受基準緩和型は各社から販売されており、種類も多いものの、無選択型は限られます。無選択型は死亡保険が一般的ですが、無選択型死亡保険の場合も契約から23年間など一定期間内に死亡した場合には、支払った保険料相当額の保険金しか受け取れません。 

    既往歴や現病歴がある人が、医療保険に入れるさまざまな方法を紹介してきました。順番として、まずは健康な人向けの医療保険に加入できるかどうか、きちんと告知して審査を受けます。その方が保険料が安い場合や、特別条件付き契約であっても、条件付き期間が終了すれば普通の医療保険と同じ保障となるからです。次に、引受基準緩和型を検討します。その際、保険商品によって告知項目が異なりますので、自分の健康状況に応じて申込可能な商品を探します。 

    なお、保険会社から提示された特別条件の内容次第では、引受基準緩和型を選択した方が納得できる保障になる可能性もあるため、特別条件付き契約となる場合は、引受基準緩和型保険と並べて比較してみましょう。 

    割増保険料が高くなり過ぎる場合やどのタイプの医療保険にも入れないという場合は、病気やケガに備えて自分で将来のための医療費を貯めておきましょう。

    まとめ

    医療保険に加入する時には、既往歴や現病歴について正しく告知する義務があります。これは同じ保険に加入している契約者の公平性を維持するためです。そのため、既往歴や現病歴にある場合に、健康な人向けの医療保険には加入が難しい場合があります。その場合は、既往歴や現病歴がある人でも入りやすい医療保険を検討すると良いでしょう。引受基準緩和型医療保険の告知項目は商品によって異なりますので、自分の健康状態や既往歴に合わせて選びましょう。




    ※この記事の情報は2024年12月時点

    プロフィール

    ファイナンシャル・プランナー(CFP®)

    田辺 南香(たなべ みか)

    大学卒業後リクルートに入社。社内ITコンサルタントからFPへ転身。心豊かな生活を実現するお金のコンシェルジュとして保険、住宅取得、老後資金等などのマネープランに関するアドバイス、執筆、セミナー講師などを中心に活動中。主な著書に、「未来家計簿で簡単チェック!40代から間に合うマネープラン」(日本経済新聞出版社)などがある。株式会社プラチナ・コンシェルジュ 代表取締役

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